二次元電気泳動ディファレンシャル・ディスプレイ解析
二次元電気泳動法(2DE)はプロテオミクスにおける主要な分離・比較検討方法です。複雑なタンパク質、糖タンパク質の混合試料を分離し、それらの発現量の増減を比較検討する為に優れた方法です。1次元目にタンパク質の等電点フォーカシング(IEF)を行ない、二次元目にタンパク質の分子量で分離するSDS-PAGEを使用します。これまで困難とされてきた膜タンパク質や細胞骨格タンパク質の抽出・分離も可能となっており、生物学的機能の解明に注目されている糖鎖解析のための精製方法としても優れています。
二次元電気泳動法の特徴は一次元目の等電点フォーカシング(IEF)であり、これによってタンパク質の僅かな等電点(pI)の違いによって細かな分離が可能です。特に哺乳類サンプルや植物サンプルを解析する場合には、タンパク質が翻訳後修飾を受けている場合が多く、1遺伝子から複数のプロテオミクスが発現・翻訳されます。これらを分離し複数のアイソフォームの検討や、翻訳後のタンパク質スプライシングによるタンパク質の局在状況の検討ができます。
IEFとSDS-PAGEのサイズは11cm、17/18cm、24cmを使用します。またプロテオミクスのpIの特異性に応じて、pHレンジ3-10だけでなく、3-5、4-7、6-11、9-12領域に絞った詳細な分離・解析も行ないます。

二次元電気泳動サンプル

●The EttanTM IPGphorTM 3(GE Healthcare)IEF装置

●サンプルカップ法によるサンプル導入

■イメージング
SDS-PAGEのイメージングには下記の一覧表のように多くの方法があります。Coomassie法は最も頻繁に使用される可視染色法ですが、感度と直線性は蛍光法より劣ります。蛍光法にはSypro Ruby、LAVA Purple、CyDyesなどを使用します。

2D SDS-PAGEで使用されるプロテオミクス染色試薬一覧
染色試薬
結合アミノ基
感度
直線性
MS解析対応性
Coomassie Brilliant Blue Arginine Lysine 良好 1 order 最適
Sypro Ruby Primary Amines 高感度 3-4 order 最適
Lava Purple Primary Amines 高感度 4 order 最適
Minimal Cy Dyes Lysine 高感度 4-5 order 良好

イメージング装置
蛍光染色データのイメージング解析にはTyphoon Trio laser scanners (GE Healthcare)使用します。
●検出領域:5 orders
●励起レーザー:RED、GREEN、BLUE
●分解能:10μm

化学発光イメージング(主にウエスタンブロッティング解析)にはFUJI FILM社LAS-3000 を使用します。

■イメージング解析
イメージング解析とは?
2D PAGEの染色像を正確に定量的に検出し、プロテオミクスの発現・翻訳量の増減を比較・評価します。
●アバンダントプロテイン14種を除去した後のヒト血漿解析, IPG:4-7、SDS-PAGE:8-18%

検出したタンパク質スポットは複数のタンパク質が互いに近接したり一部が重なったりしています。形状の歪みや位置ズレを補正する解析ソフトウエアの機能が重要となります。定量にはデンシトメトリック検出を行ないます。

●イメージングソフトウエアProgenesis PG240を用いた、ディファレンシャル・ディスプレイの三次元画像

イメージング解析によって、例えばコントロールと患者サンプルとの違いを可視化・定量評価します。これらの情報をデータベース化した後にバイオマーカの候補探索へ進むプロテオミクスをリスト化し、質量分析装置により一つずつ同定していきます。
解析にはNonlinear Dynamics社の Progenesis PG240 image analysis softwareを使用します。 受託解析機関APAF ではNonlinear Dynamics社と新たなイメージング解析システムTT900S2Sの共同開発に取り組んでいます。
http://www.nonlinear.com/news/press/2006/1904.asp

DIGE (Difference Gel Electrophoresis) を用いたイメージング解析
DIGEを用いたイメージング解析は、3種の波長の異なる蛍光試薬を用いるので、二次元電気泳動のスポット解析が単純化されます。更にはサンプル同士を比較する際に、歪みや位置ズレ調整の必要が無く有用です。3波長の一つに内部標準サンプル(通常、全サンプルのプールを使用します)を適用すれば定量性も含め、更なる正確な比較検討が可能となります。
●DIGE(Difference in gel image)によるプロテオミクス発現・翻訳量解析例

バイオマーカ探索における統計解析と実験プロトコル設計
「真の値の保証ではなく、擬陽性・擬陰性データを如何に最小化するか?」
多くの場合、解析するスポットの量的なレンジの広がりは当初は不明です。生物学的サンプルの中には凡そ5オーダーの量の違いのプロテオミクスが含まれています。つまり1:100,000の違いとなります。
通常2回若しくは3回繰り返し解析によって再現性を保ちながらデータを採取していきますが、実験・解析の目的プロトコルを注意深く確定しない場合は、同じ種類のサンプル間であっても多大なデータのブレが生じます。また1サンプルの繰り返し解析でも再現性が劣悪な場合も見受けられます。結果として統計的解析・評価に耐えうるデータが得られないケースも想定されます。
私たちは決して「真の値の獲得」を保証できませんが、擬陽性・擬陰性データを如何にして最小化するかを重視しています。実験の各工程を正確に且つ再現性良く執り行うためにプロトコル標準化を徹底させています。
実験計画・プロトコル作成のご相談にも対応いたします。

2D PAGE三回繰り返し解析, n=1059 スポット一致の再現性
Mean r2=0.984

■エレクトロブロッティング
貴重なタンパク質スポットは、その全てを解析することはスループットの面で困難です。エレクトロブロッティングによってメンブラン膜上に全てのタンパクスポットを転写しておけば、冷蔵状態で5年以上の保管が可能であり、後から様々な解析を追加で行なう事ができます。受託解析機関APAF では最大の転写効率を可能とするセミドライ転写法を開発し、ラージゲルまで転写可能としています。

■タンパク質総量測定
1. Bradford Assay
CoommassieTMを基本とする本アッセイは長年使用されてきた標準的方法です。50ug-1000ugのタンパク質量に直線性があります。
2. FLUOROPROFILETM Assay
LUOROTECHNICS社の特許製品であるFLUOROPROFILETMを用いて、蛍光法によってタンパク質の総量測定を行ないます。5ug-500ugのタンパク質量に直線性があります。
詳細情報はhttp://www.fluorotechnics.comを参照してください。

■質量分析装置によるタンパク質同定
2D PAGEやDIGEによってターゲットとするタンパク質を確定した後、MALDI-TOF、MALDI-TOF/TOF、ESI MS/MSなどの質量分析装置を用いて、タンパク質の同定を行ないます。
MASCOT等の探索エンジンを使用し、Similarityインデックス順に蓋然性の高いタンパク質の候補をレポートいたします。

<De-novoタンパク質であった場合>
1. De-novoタンパク質の場合
Swiss-PROT等のデータベースに登録されているタンパク質の場合はそのままタンパク質の同定された名前をご報告できますが、新規タンパク質(De-novoタンパク質)の場合は、別途De-novoシーケンシングによって、アミノ酸配列を決定していく工程が必要となります。 この場合は新たに受託解析業務が発生しますので、ご相談となります。

●MALDI-TOFを用いたPMF解析例

2. 翻訳後修飾による場合(糖鎖であった場合を例として)
ターゲットとなるプロテオミクスが特異的糖鎖の発現量により差異が出ている場合は、別途糖鎖解析を行なって同定します。下記データはゲルスポットに対して糖鎖切り出し処理を行なった後、Nano LC ESI MSによって解析した例です。このような解析の必要が生じた場合は新たに受託解析業務が発生しますので、ご相談となります。

●出典:近藤昭宏教授